AI 動画 API の実コスト:単価より「ガチャ回数」が効く

秒単価は請求額の中で一番小さい項目です。2026 年に動いたのは 1 本採用するまでの生成回数。2-3 回から 7-8 回へ。料金表と実測請求額。

AI 動画 API の実コスト:単価より「ガチャ回数」が効く

動画生成で予算を溶かすのは、料金表を間違えたからではありません。撮りたいカットで見積もって、捨てたカットに課金されるからです。 秒単価は誰もが比較する項目であり、請求書の中で一番小さい項目でもあります。2026 年に本当に動いたのは、タイムラインに乗せられるカット 1 本を出すまでに何回引くか、という数字のほうでした。

式:      実効コスト = 秒単価 × 秒数 × 採用 1 本あたりの生成回数
動いた値: ガチャ回数が 2-3 回から 7-8 回へ(36Kr、2026-04-01)
動かない値:料金表
実測:    6 秒 480p の Seedance 2.5 が 0.66 ドル / 103 秒、30 秒が 3.30 ドル / 200 秒
納品価:  同じ 6 秒が 2 回なら 1.32 ドル、8 回なら 5.28 ドル
基準日:  2026-08-27

以下の数字は、当日に読んだ料金表か、自分たちで実際に回して請求された生成か、名前を出して引用できる報道のいずれかです。出典をたどれなかった数字は載せていません。

料金表がなぜ「実際の値段」ではないのか

料金表は「生成」に値段をつけますが、納品するのは「残った 1 本」だからです。

動画 API はどれも、返ってきた映像の出力秒数で課金します。その場で消すテイクも含めてです。だから効いてくる単位は秒単価そのものではなく、秒単価に不採用率を掛けたものになります。

納品 1 秒あたりコスト = 秒単価 × (生成回数 ÷ 採用回数)

後ろの係数は、どの価格比較表にも載りません。どのベンダーも出せないからです。モデル、プロンプトの詰め方、絵コンテの粒度、そして少し居心地の悪い話ですが、その週にプロバイダが混んでいるかどうかで変わります。

実際の請求額で見てみます。2026-08-13 に Seedance 2.5 で 6 秒 480p を生成したときの請求は 0.66 ドルでした。

ガチャ回数納品 6 秒あたり完パケ 1 分換算
1 回(あり得ません)$0.66$6.60
2 回$1.32$13.20
3 回$1.98$19.80
5 回$3.30$33.00
8 回$5.28$52.80

この表の上下で 8 倍の開きがあります。同じモデルの最安と最高の料金表の差は 3 倍もありません。料金表を睨みながらガチャ回数を放置しているなら、小さいほうのつまみを回していることになります。

2026 年に変わったのはどの数字か

ガチャ回数です。しかも変わった原因が自分のパイプラインの外にあります。

ここは一次報道のある話です。今年 4 月、36Kr が報じたのは、それまで 2、3 本生成して使えるテイクを 1 本選んでいたユーザーが、7、8 本生成しないと 1 本選べなくなったという体感の変化でした。同じプロンプト、同じモデル名で、消費は約 3 倍です。

当時の環境も派手でした。同じ報道は待ち行列の番号が 6 桁に達したことに触れ、別の報道は待機列が 1,900 から 5 万へ伸び、待ち時間が 68 時間に達したこと、そして一部タスクの出力品質を落として滞留をさばく運用があったことを記録しています。

報道の論調に同意する必要はありません。運用上の結論だけが独立して成立します。プロバイダのその時点の容量状態は、あなたのユニットエコノミクスの入力変数であり、それは料金表に書かれていません。 四半期の間にガチャ回数が 3 から 6 に漂流すれば制作コストは倍になりますが、経理のダッシュボード上では秒単価はぴくりとも動きません。

だから係数を定数として持つコストモデルには意味がありません。毎週計算し直す前提で作ってください。

請求書は実際どうだったか

2026-08-13 の 3 回の生成です。料金表から想像するより少し厳しい数字が出ています。

リクエストモデル請求実時間備考
6 秒 480pSeedance 2.5$0.66103 秒音声トラック付き
30 秒 480pSeedance 2.5$3.30200 秒実際の尺は 30.08 秒
6 秒 480pSeedance 2.0$0.378289 秒同一プロンプト、同一秒に投入
6 秒 1080pSeedance 2.5$0.00HTTP 400、解像度拒否

最後の行が良い報せで、しかも設計に組み込む価値があります。当時 Seedance 2.5 はまだ 720p 上限で、1080p のリクエストは resolution 1080p not supported; allowed: [480p 720p] を返しました。黙って解像度を落として課金する、ということをしません。同期的な 400 は 1 円もかかりません。投入時点で弾けるパラメータは、無駄な生成に化けないパラメータです。 バリデーションは厳しめに書き、明示的にエラーを返すプロバイダを選んでください。

2.0 と 2.5 の対比のほうが示唆的です。Seedance 2.0 は 480p で 36% 安く、返ってくるまでの時間が 2.5 の 2.8 倍でした。もし 2.0 があなたのカットでもう 1 回多く引く必要があるなら、その価格差は消えたうえに待ち時間を余分に払っています。どちらがどこで勝つかは Seedance 2.5 と 2.0 の比較にまとめました。

コストを本当に下げる四つの手

狙うのはガチャ回数です。料金表で動かせる幅はせいぜい 30%、ガチャ回数には 400% あります。

下書きは安い段、納品だけ高い段。 0.11 ドルに対して 0.48 ドル、480p は 1080p の 4 分の 1 以下です。構図も拍も画角も 480p で回し、通ったカットだけ納品解像度で焼き直します。25 カットの 1 話なら、480p で 4 周回して 1080p で 1 回出すほうが、1080p で 2 周回すより明確に安く、しかも同じ完パケです。

モデルに解釈の余地を残さない。 自由度を 1 つ残すたびに、お金を払うコイントスが 1 回増えます。参照素材は人物と舞台を固定し、Seedance 2.5 は画像 30 点・動画 10 点・音声 10 点の計 50 点まで受け取ります。first/last frame はカットの始点と終点を固定し、実測では 2.5 の終端誤差が 5.4、2.0 Mini が 35.9 でした。整数秒のタイムスタンプは拍の位置を固定します。どれも単価は下げませんが、引き直す回数を下げます。

タスク種別を一発で当てる。 Seedance 2.5 はプロンプト中の語からタスク種別を推定するので、編集用のトリガー語を欠いた編集依頼は参照生成として処理され、まったく新しいクリップが返ってきます。映像としては問題ありません。ただ、頼んでいない問いに答えた、課金済みの 1 回です。タスク種別を明示すれば、この失敗は無料の投入時エラーに移せます。トリガー語と失敗パターンは Seedance 2.5 の使い方にあります。

平均ではなく比率を測る。 ログに残すのは、リクエストごとの平均額ではなく採用カット 1 本あたりの請求額と生成回数です。リクエスト平均が教えてくれるのは料金表で、それはもう知っています。採用カットあたりのコストは、プロバイダの容量状態が静かに動いたことを、たいてい経理が気づく 2 週間前に教えてくれます。非同期でポーリングしているなら、同じログから待ち行列の挙動も取れます。そちらはポーリング実測にまとめました。

まとめ

料金表はベンダー同士が競っている項目であり、こちらにほとんど交渉余地のない項目です。採用 1 本あたりのガチャ回数は、2026 年に 3 倍動いた項目、プロバイダの容量状態とともに漂流する項目、参照素材と明示的なタスク種別と解像度の段分けで下げられる項目、そして誰も見積もりに書いてくれない項目です。

測って、記録して、毎週引き直す。料金表の比較はそのあとで、係数を表に入れた状態でやってください。単価は Seedance 2.5 のモデルページに掲載しています。

よくある質問

AI 動画生成 API は 1 秒いくらですか
ゲートウェイ経由の Seedance 2.5 で 480p が出力 1 秒あたり 0.11 ドル、720p が 0.24 ドル、1080p が 0.48 ドルです。Runway の API は同じモデルを 480p 20 クレジット毎秒、720p 30 クレジット毎秒で課金し、API のクレジットは 1 セントなので 0.20 ドルと 0.30 ドルになります。ただしこれは料金表の数字で、実際に納品できる 1 本あたりの費用はこの単価に「何回引いたか」を掛けたものです。
実効コストはどう計算しますか
実効コスト = 秒単価 × 秒数 × 採用 1 本あたりの生成回数です。2026-08-13 に実測した 6 秒 480p の Seedance 2.5 は 0.66 ドルの請求でした。混雑前の 2-3 回で 1 本という比率なら納品コストは 1.32 から 1.98 ドル、36Kr が報じた 7-8 回で 1 本なら同じ 1 本が 4.62 から 5.28 ドルになります。料金表は 1 円も動いていません。
なぜガチャ回数が増えたのですか
原因は三つあり、自分の側にあるのは一つだけです。混雑期の容量調整で出力品質が落ちる、これは中国語圏の報道で降智と呼ばれました。プロンプトの自由度が高すぎてモデルが毎回選び直す。そしてタスク種別の判定ミスで、編集依頼が参照生成として処理され、まったく問題ないけれど頼んでいない映像が返ってくる。後ろ二つはパイプライン側で潰せます。
秒単価が安いモデルは本当に安いですか
ガチャ回数が同じならという条件付きです。Seedance 2.0 の 480p は 0.07 ドルで 2.5 の 0.11 ドルより 36% 安いのですが、2.5 が 2 回で決まるカットに 2.0 が 4 回かかるなら納品 1 秒あたりでは高くつきます。同じ 6 秒のプロンプトで実測した所要時間は 2.0 が 289 秒、2.5 が 103 秒でした。
モデルを変えずにコストを下げるには
単価ではなく回数を削ります。480p は 1080p の 4 分の 1 以下なので、構図と尺と動きは 480p で詰めて、通ったカットだけ納品解像度で焼き直す。参照素材と first/last frame で動かさない部分を固定する。整数秒のタイムスタンプで拍を明示する。そして請求額をリクエスト単位ではなく採用カット単位で記録する。リクエスト平均は料金表を教えてくれるだけです。